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【ローマ人の物語4】ハンニバルの復讐

文庫版「ハンニバル戦記(中巻)」で描かれているのは、カルタゴの若き武将ハンニバルによるローマへの復讐です。「古代最高の戦術家」と呼ばれたハンニバルのまえに、こんどはローマが完敗します。カルタゴの(父)ハミルカル-(子)ハンニバル、ローマの(父)コルネリウス-(子)スキピオ、双方指揮官の世代をこえた因縁の対決でもあります。冷血で狡猾なハンニバルですが悪役の魅力が滲み出ています。

p118 ローマの崩壊は「ローマ連合」の崩壊によってしか実現しないと信ずるハンニバルは、今の時点での首都攻撃は時期尚早であると答えたのだ。

ハンニバルの目指した戦略はただ一つ、ローマ連合の鉄の結束にくさびを打ち込み崩壊させることでした。ローマと連盟関係にある諸国を力でねじ伏せるだけでなく、情報取引や金銭授受による懐柔、捕虜にとったローマ市民兵と同盟諸国兵に待遇に差をつけ、ハンニバル側についたほうが得だと思わせる巧みな演出も駆使しています。どこで戦えば、同盟国の離反にもっとも効果が挙がるかという計算までされています。戦いの流れをつくり、戦場において戦力以上のパフォーマンスを発揮するために、自分たちが優位になるように舞台をととのえる才能に秀でていたといえましょう。75万もの動員力をもっていたローマに2万6千で攻め入ったハンニバルが何よりも重視したのが情報収集と情報操作でした。そのうえでハンニバルのとった戦術は、包囲して全滅させるという作戦です。戦闘ではなく殺戮といえるほど凄まじいものだったようです。

p52 カルタゴ軍の宿営地でも、ハンニバルが兵たちを集め、彼らの士気を鼓舞する策に出ていた。ただし、カルタゴの若者は、ローマの名門中の名門貴族のコルネリウスとは、ちがうやり方をした。

象を率いての過酷なアルプス越えのあと、ハンニバルは指揮官として疲労困ぱいした軍隊の士気をいかに高めたのか。ローマのコルネリウスが、「われわれには輝かしい戦績がある。相手は敗者の残党だ。新たなる敵ではない。われわれの国土を、われわれ一人一人の家族を守るために戦おう!」と宣言したのに対し、ハンニバルのやり方は、捕虜にしたガリア人同志を勝った方を開放するという条件で決闘させ、その闘いの様子を兵士たちに見物させたのです。そして、「今観たことは見世物ではなく、おまえたちの現状を映し出した鏡なのだ。勝者になればローマ人の所有しているものはすべておまえたちのもになり、土地や金貨、市民権など望むものを与えよう!」と言い放ちます。ローマのやり方が名誉や愛国心に訴えかける理想主義だったとすれば、ハンニバルのやり方は、勝つか負けるか、生きるか死ぬかを強烈に意識させ、勝ったあとの具体的なイメージをみせる現実主義だったともいえそうです。

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