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【ローマ人の物語6】グラックス兄弟

本書のタイトルである「勝者の迷走」が意味するものとして、敵は外にはなく自らの内にあるということが挙げられます。かつてのように貴族VS平民という政治上の平等を求めた争いではなく、社会正義の公正を求めて富める者VS貧しき者とのあいだに起きた抗争だったようです。この時代を生きたグラックス兄弟に、覇者ローマを維持し続けていくための一つの信念をみました。

p59 続けることで成果をあげ、共和政ローマの基盤を確実にしなければ、いずれはローマも滅亡した他国の轍を踏むことになるという危機意識が、孤立化しつつあった彼を支えたのである。

名将スキピオの孫にあたるグラックス兄弟(ティベリウス&ガイウス)は高潔な政治家でした。"銀の匙をくわえて生まれてきた"と形容される血筋のよさの一方で、執政官や財務官としてではなく、平民代表のリーダーたる「護民官」として、農地改革をはじめとする改革に取り組みます。これは、無産者に落ちた人々に、農地という資産を与えることで自作農に復帰させ、失業者を救済、社会不安を解消しようとしたものだったようです。富める者と貧しき者の差が広がることによって、兵役免除の無産者が増えたことに対し、直接税の代わりに兵役を課すローマ軍団の根幹をゆさぶる危機と考えていたのです。
しかし、平民集会での議決によって次々と改革案を打ち立てる護民官グラックスに対し、寡頭政体への反逆行為とうけとった元老院との対立が強くなっていきます。やがて反グラックス派の暴徒によって、混乱する集会会場においてティベリウスは殺害されます。志し半ばにして倒れた兄の意思を引き継いだ弟ガイウスも、暴徒鎮圧という名のもとに非常事態宣言を発令した元老院の手によって、あっけなく制圧、抹殺されました。

p48 人間が人間らしく生きていくために必要な自分自身に対しての誇りは、福祉では絶対に回復できない。職をとりもどしてやることでしか、回復できないのである。

おそらく、元老院の抵抗にも屈することなく、改革を実行しようとしていたグラックス兄弟の信念の源にあたるのではないかと。今日を振り返るにNeetを想起してしまいました。
ところで、グラックス兄弟の母親にあたるコルネリアは、グラックス家に嫁いだスキピオの娘です。彼女は「子は、母の胎内で育つだけでなく、母親のとりしきる食卓の会話でも育つ」と言い、のちにローマ女の鑑と讃えられたそうです。2人の息子が死んだあとも、ナポリ湾の西端にあるミセーノに引退したコルネリアの食卓へは来訪者が絶えず、知的サロンでありつづけたといいます。
以上 文庫版「勝者の混迷(上)」より。

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