« わしづかみ | トップページ | 海辺のカゲカ »

産業文化力がおもしろい

年明けから日経新聞で連載している「ゼミナール:産業文化力が拓く」シリーズが示唆に富んでいて面白いです。情報社会がどのような形で時代を切り拓くエンジンになりうるのかを考察しており、すでに第18回になっています。
世界の若者から日本はカッコイイと思われている。そんな風に持ち上げられると少し意外な感じもしてしまうのですが「それが現実」のようです。そういえば、「コンテンツビジネスを国家戦略の柱に」を合言葉に、2004年5月にはコンテンツ促進法が成立しました。そんなカッコイイ日本がめざすコンテンツ産業は、ポップカルチャーにけん引されているというところから話が始まっています。
マンガやアニメなど、長い期間培われてきた日本における大衆の審美眼と表現力が、デジタル技術によって発揮されはじめたというのが、シリーズの論調の一つだと思います。デジタル化の一番の影響力は、プロとアマの垣根をなくし一億総クリエイターを可能にしたことです。アナログ時代の特徴が、少数のプロがコンテンツを生産し大衆が消費するというハリウッドモデルであるのに対し、デジタル時代の特徴は、個人の参加、共有、交換によってコンテンツを共同生産するピア・ツー・ピアモデルだといっています。たしかに、個人プロデュースによるインディーズ作品の台頭、Blgの流行、電車男などの状況をピックアップしてけば一目瞭然ですね。
ポップカルチャーは「ソフトパワー」としても注目されているようです。軍事力や経済力を源とするのがハードパワーならば、それとともに国際政治や外交面でも日本ファンを増やす最強の手段だからこそ、国策として取り組むべき課題だといっています。最近の関心事として、軍事力だけでなく戦いの敗者すら同化し、ローマシンパをつくるという国家戦略をとったがゆえのローマの繁栄と重なり、個人的にはとても共感できました。
ポップカルチャーの代表であるマンガについて、北米版の少年ジャンプが「右とじ」で発行されているのだそうですね。知りませんでした。有史以来、横文字を左から右へ「左とじ」の本でのみ読んできた欧米において、文化革命といっても過言ではないとする言及にいたっては、胸のすく思いです。
こんな感じで、「ポップカルチャー」論ついて検討が延々と重ねられてきましたが、最近いよいよ本題に迫りつつあります。いま最も勢いのあるポップカルチャーの産業群に注目することで、その本質を探り、そのメカニズムを解明しようというところに来ています。たとえば、日本発のポップカルチャーが、グローバルな世界市場に対して各国の文化にまで影響を与えながら、普及・浸透していくプロセスについて次のような指摘があります。

1.社会的ビジョン
ハローキティの例が挙げられています。サンリオ社長の辻信太郎氏による「小さな贈答品によって人間関係が築かれる」という社会的コミュニケーションのビジョンをもっていた点に注目しています。ブランドの普及を考えるうえで、このような発想が問われるとしてます。ある意味で、眼からウロコが落ちました。

2.商品の連結
90年代の「クール・ブリタニア(格好いい英国)」現象との違いについて、日本の場合は、マンガやアニメ、ゲームが融合(メディア融合)し、キャラクターなどの素材を融通しあう相互依存関係の強い産業を形成している点が指摘されています。たしかに子どもをみていると、カードゲーム、お菓子、ゲームソフト、テレビ番組、マンガ、衣服、など自分のお気に入りのキャラクターが実に多様な商品として提供されている実態がありますね。

3.オタクの存在
ここでのオタクとは、引きこもって活動する社交性のない人たちというイメージではなく、「粋の眼」「匠(たくみ)の眼」「通の眼」を兼ね備えた人々という意味で捉えられています。彼らは、異なる分野の橋渡しをしたり、細部の解釈をする媒介者となって、文化の普及・伝播・結合を果たす役割を担っているのが実態だといいます。(IT業界でいう「エバンジェリス」などと呼ばれている人たちのようですね。)そして、国境を越えて普及・伝播する彼らの表現のエッセンスが、文章ではなく「図像」であるという点は、まさに本質をついているなあと感じます。言語を超えたマンガでありフィギアでありデザインであるのでしょう。

おそらく、このあとも鋭い切り込みがあるものと楽しみであり、シリーズ最終回まで目の離せない企画です。

|

« わしづかみ | トップページ | 海辺のカゲカ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/24960/2741631

この記事へのトラックバック一覧です: 産業文化力がおもしろい:

« わしづかみ | トップページ | 海辺のカゲカ »