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イギリスから来た男

LIMEYこの映画をスティーブン・ソダーバーグ監督の傑作とみる人も多いようです。
話としては、娘の事故死に疑いをもった父親が真相を追い求め、娘を死なせた相手に復讐するというごくシンプルなストーリーです。アクション物にしては今ひとつ迫力がなく、ストーリーも淡々と進みます。彼が真相を知る最後のクライマックスですら「乾いた感じ」のトーンは変わりません。それでいながら、なぜか引き込まれていく不思議な雰囲気をかもし出していました。
この独特な雰囲気の理由、まず挙げられるのがソダーバーグ流の演出手法です。過去と現在のシーンを交互に切り貼りしたような映像は、スタイリッシュでカッコイイ!という評価を得ているようです。主人公の父親ウィルソン(テレンス・スタンプ)の回想シーンに、彼自身が出演した昔の映画のシーンを使うというアイデアはたしかに斬新ですね。KAFKA(迷宮の悪夢)でも、それまでのモノトーンの映像が、主人公が城に入るとカラーに切り替わり、城から出るとモノトーンに戻るという面白い演出をみたことがあります。ソダーバーグの凝りに凝った演出の謎解きするのも楽しいのですが、個人的にはストーリーそのもので楽しませてくれる映画のほうが性に合っているようです。
もう一つの見どころは、テレンス・スタンプの渋い演技でしょう。ボコボコに殴られようが、銃で撃たれようが、矢で刺されようが、決して倒れることのない不屈の老人。かつてイギリスには「鉄の女」がいましたが、この映画でのウィルソンは「鉄の男」のようです。9年間の刑務所暮らしで鍛え抜かれた「凄み」と「孤独」が伝わってきました。「孤独」という点では、復讐相手であるテリー(ピーター・フォンダ)も同じです。過去の栄光に浸りながら、逃げるように生きる姿は「孤独」そのものでした。
タイトルの「THE LIMEY」とは「英国人」の意味だそうですが、これを邦題「イギリスから来た男」としたのは名訳だと思います。いかにも無機質なこの映画を象徴しているかのようです。

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