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宮部みゆき:「理由」

超高層マンションを舞台にした荒川一家4人殺しの事件は、ノンフィクションと思いきや、宮部みゆきが創作した600ページ(文庫本)ものフィクションなのでした。事件が解決した後、関係者へのインタビューによって事件を解き明かしていくという手法が特徴的です。事件の背景が詳細に述べられているだけでなく、登場人物一人ひとりの生い立ちまでも精緻に作りこまれていて、恐ろしいほどのリアリティを感じさせられました。時折、とくにクライマックスのシーンで本質を突いたような人間描写の表現があってドキッとさせられます。たとえば、こんな感じです。

P520 人を人として存在させているのは「過去なのだと、康隆は気づいた。この「過去」は経歴や生活歴なんて表層的なものじゃない。「血」の流れだ。あなたはどこで生まれ誰に育てられたのか。誰と一緒に育ったのか。それが過去であり、それが人間を二次元から三次元にする。
P552 信子は、いつか国語の先生が、人間には「見る」というシンプルな動作はできないのだと言っていたことを思い出した。人間にできるのは、「観察する」「見下す」「評価する」「睨む」「見つめる」など、何かしら意味のある目玉の動かし方だけで、ただ単に「見る」なんてことはできないのだと。
殺人事件が起きた"理由"が、登場人物たちの訥々とした語りによって炙り出されていくなかで、社会問題、とくに「家族の絆とは何か?」について考えさせられる作品です。自己破産というテーマを取り上げた『火車』とともに社会派ミステリーというカテゴリに分類される所以でしょう。
占有屋という訳アリな商売への着眼もすごいのですが、さらに意外性のあるストーリーに仕立て上げてしまうのが作家宮部みゆきの凄さだと思いました。

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コメント

Every one remembers that men's life is very expensive, however people require cash for various things and not every man earns big sums money. Therefore to get some credit loans and credit loan would be a right way out.

投稿: CabreraKatelyn31 | 2012/02/03 17:55

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» ●「日暮らし」(上)(下) 宮部みゆき [kuzira☆くじらの読書と映画鑑賞と普通の日々]
「ぼんくら」という以前出された本の続編となっています。 私は宮部みゆきの「魔術はささやく」「火車」「理由」「模倣犯」などの現代物の推理小説も読み応えがあり好きなのですがソレよりも彼女の書く下町時代小説のほうが断然好きなのです。この「日暮らし」でもそうなのですが登場人物たちが活き活きと描かれておりとても読み心地が良いのです。 前回の「ぼんくら」もそうですが「日暮らし」は幾つかの短編が連作となって書かれています。 一つ一つの物語それぞれに小�... [続きを読む]

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著者:宮部みゆき 荒川区にある高層マンション、ヴァンダール千住北ニューシティで一 [続きを読む]

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