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【ローマ人の物語15】妥協ではなく

イタリアの高校の歴史教科書では、指導者に求められる資質として、次の5つを挙げているそうです。そして、カエサルだけが、このすべてを持っていたと。

・知性
・説得力
・肉体上の耐久力
・自己制御の能力
・持続する意志
では、ローマの初代皇帝アウグストゥス(オクタヴィアヌス)はどうだったのか。
塩野氏の通信簿によれば「肉体上の耐久力」「自己制御の能力」「持続する意志」は100点。「知性」は80点、ところが「説得力」については、辛口の評価を下しています。

p151伝えたい、わかってもらいたいという強烈な想いが、文章力を向上させるのである。

という指摘には、ブログを投稿する身として大いに反省させられました。
もっとも、塩野氏は酷評するだけでなく、自らに欠けている「説得力」を自覚し、それを補うためにある人物を登用し、任せ切ったというアウグストゥスの度量を賞賛もしています。この登用された人物とはマエケナスです。

p152 アグリッパがアウグストゥスの「右腕」ならば、マエケナスは「左腕」であった。

成功する人物の近くには、必ず彼を補佐する人物、それも正反対の資質をもった人材が必ずいるものですね。相互補完(=足して2で割って丁度よい)という点では、生涯の伴侶にも同じことがいえるのかもしれません。
ところで、文化・広報担当を一任されたマエケナスの名前は、後世に文化を助成する活動を意味する「メセナ」の語源になったのだそうです。

p88 いかなる事業も、それに参加する全員が、内容はそれぞれちがったとしても、いずれも自分にとって利益になると納得しないかぎり成功できないし、その成功を永続させることもできない。

アウグストゥスによる改革について塩野氏が引用したのは、この時代から1500年後の政治思想家マキアヴェッリの言葉だそうです。アウグストゥスの政治手法は、一見すると、全員が譲歩して折り合いをつける「妥協」のようにみえます。しかし、その本質は「あっ、そういうことなら得だな」と民衆に思わせることです。アウグストゥスは妥協したのではなく、決して「帝政」という名を口にすることなく、着実に自分の考える方向に誘導していったのでした。
今日の「郵政民営化」や「年金改革」の問題はどうなのでしょう。妥協ではなく誘導であるならば、誘導の先にあるものをしっかり見据える必要がありそうです。
以上 文庫版「パクス・ロマーナ(中)」より。

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