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宮部みゆき:蒲生邸事件

受験のために上京した主人公の孝史は、宿泊先のホテル火災に遭いますが、謎の男に奇跡的に救出されます。しかし気がつけばそこは昭和11年。雪の降り積もる東京は、2・26事件の当日だったのでした。

孝史がタイムスリップした先の蒲生邸内では、主人である元陸軍大将の蒲生憲之が自決するという事件が起こります。歴史上は自決とされている大将蒲生憲之の死には多くの謎が。。。
真相は?もしも殺人事件だったのなら誰が犯人なのか?これだけでもミステリーになりそうですが、ここからが宮部みゆきの小説の真骨頂で、さらに複数のストーリーが錯綜していきます。

ひとつには、時間旅行者の男が選んだタイムスリップ先はなぜこの日なのか?2・26事件阻止したいと考えたからなのか?あるいは別の目的があったのか?という謎解きストーリーです。面白いのは、別々の価値観をもった2人の時間旅行者を登場させることで「人は歴史を変えられるのか?」というテーマを突き詰めていることです。この結論そのものが、実はもうひとつのストーリである孝史が恋心を抱く女中ふき(文庫本表紙の女性のイメージ)との恋のゆくえにもつながります。さらには、受験に失敗した孝史少年の成長物語という見方もできます。

登場人物や事件の経緯はフィクションでありながら、昭和暗黒期へと傾倒していく分岐点となる相沢事件や2・26事件など、第二次大戦前夜の不安、焦燥感が見事に描かれていると思います。その一方で、他の作品同様、宮部さん特有の人間同士の温かいつながりや、人でなければできない仕事の尊さ、苦労しながらも前向きに生きる人々の姿といったものが感じられます。Amazonの書評でどなたかがコメントされていますが、昭和という激動の時代を生抜いてきた人たちに敬意を示したくなります。

文庫本で678ページにも及ぶSF大作は読み応え十分です。個人的には★★★★、間違いなく宮部作品ベスト3に入ります。

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コメント

cozyさん、はじめまして。
私のブログにコメントありがとうございました。

そうですね。2人の時間旅行者を登場させたところがミソですね。
もう1人がいなければ、全く違う話になってしまったでしょうね。
そしてこの時代だからこそ、孝史の人としての成長が見られたのかなぁと感じました。

投稿: こむぎ | 2005/11/03 00:01

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