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グライスの「協調の原理」

語学を勉強している知人が「日常会話ほど難しい」と言っていました。
語学の習得レベルを示すのに、よく「日常会話程度ならこなせる」などといいます。入門レベルをそのように表現することが多いようですが、これは旅行会話あるいは教室会話といった方が適切で、実は、日常の雑談や何げない会話ほど、話すのも聞きとるのも難しいという話でした。

外国語による会話に限らず、どうも会話が噛み合わない、話が食い違うといったときには、協調の原理に則っているかどうか確認してみるのも有効かもしれません。哲学者のポール・グライスはその著書「論理と会話」の中で、「協調の原理」という格率を紹介しています。主に話し手として心がけるべき会話のルールです。(以下同書より引用)

量についてのルール
●(言葉のやり取りの当面の目的のための)要求に見合うだけの情報を与えるような発言を行いなさい。
●要求されている以上の情報を与えるような発言を行ってはならない。

質についてのルール
●偽だと思うことを言ってはならない。
●十分な証拠のないことを言ってはならない。

関係についてのルール
●関連性のあることを言いなさい。

様態についてのルール
●曖昧な言い方をしてはならない。
●多義的な言い方をしてはならない。
●簡潔な言い方をしなさい(余計な言葉を使ってはならない)。
●整然とした言い方をしなさい。

一見、べからず集のような印象を受けますが、この原理の前提である「会話とは双方の協調的な企てによってなされるコミュニケーションである」という一文にこそ本質があると思います。相互に歩み寄る姿勢のことです。

人間はロボットと違って、発せられた言葉だけでなく、その背景や意図を汲みとって会話をすることができます。これを会話の「含み」というのだそうです。ようするに、話し手の「含み」を察し、話し手の言葉不足を補おうとする聞き手の態度さえあればコミュニケーションが成立するし、会話における言葉尻や厳密性だけを追求しようとすればコミュニケーションは成立しえないということですね。

論理と会話

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