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「100年に1度の危機」の背景、メカニズムがよくわかる

『金融大崩壊―「アメリカ金融帝国」の終焉 (生活人新書)』が、わかりやすかった。

リーマン・ショックを引き起こし、アメリカの5大投資銀行すべてを消滅させる直接的なきっかけになったのは、たしかにサブプライムローンの問題かもしれない。しかし、アメリカの金融政策の歴史を振り返ると、「100年に1度の危機」を引き起こした根本的な構造がみえてくる。それは、1995年の強いドル政策のときから、「すべてのお金はウォール街に通ずる」といわれる経済モデルをつくり上げてきたアメリカの金融政策だ。

日本の成長モデルというのは、消費を我慢して将来のために節約し、貿易黒字を蓄積していくというモデルである。
一方のアメリカがめざしたモデルはまったく違う。1995年からアメリカで始まったモデルは、我慢をして所得のなかから将来のために積み立てるのではなく、他人のお金を借りてきて、それを回転させ、レバレッジを効かせ、またたく間に巨額な資本へ膨らませていくというものであった。まさに錬金術である。そのためには、世界のお金をアメリカに流し込むための仕掛けが必要であった。IT革命もITバブルも、時価会計システムも、すべてつながる話なのである。
そのような日米の経済モデルの違いを、著者はそれぞれ「日本輸出株式会社」と「アメリカ投資銀行株式会社」という比喩で表現する。

著者は、今回の世界金融危機と、アメリカによる新自由主義の行き詰まりについて、「資本-国家-国民による三位一体関係の崩壊である」と意味づける。つまり、企業(資本)が製品をつくって販売し、経済活動が活発になることで国家は税収が増え、その税収を使って国家(政府)は国民に対してサービスを還元するという流れが、断ち切られてしまったのだという。

「サブプライムローンがつくられ、その証券化商品を売り買いしていた投資家たちは、自分たちの行為がアメリカの国家や国民にとって役に立つよいことであるとは思っていなかったでしょう。(P41)」と著者は指摘している。金融工学といえば聞こえはいいが、リスクを細切れにして、混ぜ合わせた金融商品をつくって、確信犯的に売り逃げたのなら詐欺行為ではないか。資本を右から左に動かすだけで、信じがたい利益を手にした資本家たちがぬくぬくと生活する傍らで、真面目にものづくりに取り組んできた日本のメーカーが報われないのは、やはりどこかおかしい。

資本-国家-国民という三位一体の関係が崩れ、資本が国家に対して優位に立った今、政治への期待は大きいと思う。それは、単に大きい政府をつくろうという議論ではない。「アメリカ投資銀行株式会社」にくっついて成長してきた「日本輸出株式会社」というモデルを根本的に見直し、今後日本がグローバル環境のなかで、どのように成長していくべきかを示す、将来的なビジョンづくりである。

金融大崩壊―「アメリカ金融帝国」の終焉 (生活人新書)
金融大崩壊―「アメリカ金融帝国」の終焉 (生活人新書)

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