フロー理論

チャンスを呼ぶ力

誰かと話したいと思っているときに、その人物から電話がかかってくる。
こちらから電話してみたら、実は相手も自分と話したがっていた。
自分が求めているものを、まったく予期せぬ方法で見出した。
自分に役立つ本や記事を偶然手に入れた。
そのような偶然は、「シンクロニシティ」と呼ばれます。シンクロニシティは人生の導きであり、自分がやっていることをの正しさを証明してくれる合図のようなものだといいます。

もし、そのようなことがあったら、それは「フロー」の力なのだそうです。
フロー研究の第一人者であるチクセントミハイ博士によれば

フローとは「1つの活動に深く没入しているので、他の何ものも問題とならなくなる状態、その経験それ自体が非常に楽しいので、純粋にそれをするということのために、多くの時間や労力を費やすような状態」
と定義されます。
しかし、この本で言っているフローは、ある局面でのフロー状態というよりは、人生をフローにたとえるような世界観のようです。

この本には、「フローとは自分と他人や世界との垣根を取り払い、宇宙と調和して生きているという実感を味わわせてくれる、努力とは無縁の自然な人生の開花である。」とあります。
これだけ読むと、何のこっちゃ?となりますが、万物は大きな流れ(フロー)の中にあり、私たち一人ひとりも、その全体の中の一部なのだということ。そして、テレサテンではありませんが、「時の流れに身をまかせ」という生き方こそ、幸福をもたらすのだという風に理解しました。

そして、ここが一番のポイントだと感じたのですが、

フローは個人の力では決して引き起こすことができないものであり、ただ存在するだけであるということ。わたしたちにできるのは、フローの存在を自覚し、シンクロニシティが自然に発生するような人生を歩むことだけ、ということ。

フローが働いているときには、物事が落ち着くべきところに落ち着き、障害が消え去り、タイミングが完璧で、お金、仕事、人間、チャンスなど、必要なものが必要なときに手に入ります。つまり、流れにのっている状態でしょう。

とても不思議でミステリアスな現象ですが、自分にも経験があります。つい先日も、仕事のことである先生に相談したいなと思っていたら、何とその先生から電話が入りました。しばらくお会いしていなかったので大変驚きました。

そのようなシンクロニシティ、つまり意味ある偶然の一致に注意を払いながら、フローに身をまかせなさいという教えは、パウロ・コエーリョ作の「アルケミスト―夢を旅した少年」にでてくる世界観、「マクトゥーヴ」という教えとほぼ同じだと思います。

この本では、流れにのって生きている人たち(フローマスター)の幸福な人生を参考にしながら、フローの力を引き寄せるための心構え、いわばチャンスを呼び込む力をつけるための知恵について書かれています。それは9つの法則としてまとめられています。
第1の法則・・・物事に真剣に関わる
第2の法則・・・自分に素直になる
第3の法則・・・勇気をもつ
第4の法則・・・情熱を忘れない
第5の法則・・・今、ここに生きる
第6の法則・・・心に壁をつくらない
第7の法則・・・物事をあるがままに受け入れる
第8の法則・・・前向きに生きる
第9の法則・・・信頼する

それぞれの法則の詳細は、本書を読んでのお楽しみですが、ああ、やっぱりそういうことだったのか、と気づかされることも多かったです。ミスチルやアンジェラ・アキの歌詞を連想させる示唆もあったりして、感性の鋭いアーチストたちは、こういうことを身をもって体験しながら詩をつくり、メッセージを伝えようとしているんだなと思ったりします。
啓示的で、ちょっと怪しげな世界なのですが、書いてあることには共感することも多く、あらためてフロー理論には魅力を感じています。

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遊ぶように没入して働く人たち

「フロー理論」と「禅」の思想との類似性について言及している点が興味深い。
著者が提唱するイマージョン経営の「イマージョン」とは、没入するとか浸りきるという意味らしい。

内省による成長は田坂広志さんのキャリア観、本音ベースの対話は柴田昌治さんの組織開発アプローチを思い起こします。じわりと効いてくる東洋漢方的なテイストが感じられます。

「フロー理論型」マネジメント戦略―イマージョン経営12のエッセンス (ストラテジー選書 2)

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「勝つこと」と「楽しむこと」

このまえの日曜日、私たちの少年野球チームは一回戦であっさり敗退。
お前たちは勝つ気があるのか!攻める気持ちがあるのか!悔しくないのか!
監督、コーチをはじめ、応援にきていた多くの親たちの感想です。

技術では決して負けていないのに、気持ちで負けたという試合でした。おっとりして優しすぎる選手たちに、憤りすら感じました。帰宅後、息子の不甲斐なさに説教モードになったのは言うまでもありません。

私たちのチームは「野球を楽しむ」をモットーにしています。しかし、負け続けていては楽しいはずもありません。どうしたら選手の心に火をつけられるだろうか?別れ際、他のコーチとの会話に結論はありませんでした。

怒鳴ったり、脅かしたりという外発的な動機づけではなく、選手たち自身が、野球の本当の「楽しさ」を発見できるような働きかけができないものか。
最近、「楽しさ」=「フロー体験」という考え方を知り、チクセントミハイ博士の本を読んでいたところです。

-------引用

■運動選手にとってフローが重要な理由

 ピークパフォーマンスを達成することは、競技種目の選手やコーチにとって非常に重要な目標であり、フローはそのような結果を生むのに役立つ。フローの心理状態は、人を自己の限界へと駆り立てる傾向がある。ベストを追求する選手にとって、フローがきわめて重要である理由の1つはそこにある。選手やコーチなら熟知しているように、心が集中していないときに身体を高い水準で働かせることは困難である。
 ピークパフォーマンスを求める人々にとってフローは重要であるが、他方では結果とは無関係に、フロー体験それ自体に価値がある。結果にこだわりすぎるとフロー体験は容易に失われてしまう。試合に勝つことへの関心が強すぎると、フローをもたらす可能性がある心の状態が失われることになる。このことはパフォーマンスにとっても致命的である。さらに悪いことに、スポーツの存在を何よりも正当化する、楽しむという気持ちを失うとしたら、いったいスポーツから何が得られるというのだろうか。

(「スポーツを楽しむ―フロー理論からのアプローチ」P18-P19より引用)

スポーツを楽しむ―フロー理論からのアプローチ

これによると、このフロー状態に至るには、挑戦水準と技術レベルのバランス(CSバランス)がポイントだといいます。最適なバランスを生み出すための手立てとして
・自分なりの目標を立てる(具体的な行動と目標)
・技能一覧表をつくる(重要度と自己評価)
・過去のフロー体験を思い出す
・自己への語りかけをメモする(消極的な語りかけは積極的なものに置き換える)
などが参考になりそうです。

ようするに、「書き留める」ということが大切なのだ!
と、思っていた矢先に監督からのメール。

>>各自、ノートを1冊用意して練習、試合の反省を書かせます

さすが!我らの尊敬する監督です。

行動を起こす(怠惰な心に打ち勝つ)ためには、生活の一部にする(習慣化する)ことがポイントです。たしか豚イヌの本にも書いてあったと思います。

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フロー体験について

われを忘れ、物事にのめり込んでいる状態を「フロー」と呼ぶのだそうです。
このフロー体験の中にこそ人間の「楽しみ」の原点があるというのが本書の主題です。

フロー理論の第一人者であるチクセントミハイ教授は、内発的に動機づけられた人々(ロック・クライマー、チェス・プレイヤー、バスケットボールの選手など)へのインタビューによって、うまくいっているときの経験、すなわち幸福感を感じるフロー体験の特徴を抽出しようと試みています。

楽しみの社会学
楽しみの社会学

この本でフロー体験というものを知って、あることを思い出しました。

数年前、新規事業立ち上げのプロジェクトリーダーを任されたときのことです。新規事業とはいえ、細々としたものでしたが、今思えば連夜の終電をものともせず、よくぞあそこまで仕事に没頭できたものだと思います。若さゆえ、良きメンバーに恵まれたゆえの貴重な経験ですが、今振り返ってみても、義務感や気負いというよりも、ただ純粋にみんなと仕事をすることが「楽しい」と感じた記憶しかありません。あれこそフロー経験だったのではないかと。

ソニーのロボット犬「AIBO」の開発責任者でもある天外伺朗氏は、「運命の法則」という本の中で、「燃える集団」と称して、自分の関わったプロジェクトでのフロー体験を書き綴っています。結果よりもプロセスが重要だと説き、そのプロセスが「フロー」に入っているかどうかが、プロセスの良し悪しの判断基準の一つであるのだという考えに、少なからず共感しました。

本書ではチクセントミハイ氏が、インタビュー結果より次のようなフロー体験の特徴を挙げています。とても興味深い知見だと思います。

1)行為と意識が融合する
まるで呼吸のように、無意識のうちに行為がなされる。

2)そのこと一点に注意が集中する
周囲のことが気にならない、気づかない。

3)自我を忘れる
「うまくやろう」と自我を働かせることなく、いろんなことが「自動的」に進むような感覚になる。

4)支配感をもつ
自分自身を支配している感覚。相手はそこにいるが、相手と争って勝とうというのではなく、球技であればボールを正しく扱おうとしている自分がいるだけ。

5)明確な要求とフィードバックがある
矛盾した要求はなく、単純化されたことをただ行なうだけ。うまくいっているかどうか評価したり、行為を点検したりする自分はいない。

6)行為そのものが自己目的的である
たとえば、チェス・プレイヤーの満足は賞金や名誉ではなく、知的な卓越性を誰かと競うという対局そのものであり、ロック・クライマーの満足は、頂上を望むことではなく、岩を登るという行為そのもの。

そして、フロー状態に入るための条件として、チクセントミハイ氏は一つのモデルを示しています。それは、挑戦しようとしていることと自分の能力(技能)の関係がつり合っていれば、フロー状態が起きるというものです。
たとえば、岩を登ろうとするロック・クライマーの技能が、登攀難度とつり合っていれば、フロー状態が生じますが、技能のほうが高い場合には退屈を、技能のほうが低い場合には不安を感じるだろうという理論です。
実は、この知見こそ、本書の原題「Beyond Boredom and Anxiety」(「倦怠」と「不安」を越えて)なのでした。

最近読み返したガルウェイのインナーゲーム理論に通じるものですし、ヤンキース松井選手が著書「不動心」のなかで言っている、チャンスに強いバッターは、ここぞという場面で平常心を保てる選手だということにもつながりました。心理学の研究分野としての「フロー理論」に、今後も注目してみたいと思います。

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