伊坂幸太郎

フィッシュストーリー

伊坂幸太郎の最新短篇集。
あの作品のあの人も登場します。
フィッシュストーリー

「動物園のエンジン」
仙台の街を舞台にしたラッシュライフを思い出します。
伊坂さんらしい動物愛護の精神もうかがえます。
地下鉄のなかでの主人公の回想の物語だが、余韻がうまい。

「サクリファイス」
閉鎖的な村は、どこかオーデュボンの祈りを彷彿させます。
「こもり様」という奇怪な風習をもつ寒村に生まれた2人の男。
その境遇が、「犠牲」という運命を決定づけたのか。

「フィッシュストーリー」
フィッシュストーリーでつながる過去、現在、未来。
二十数年前、現在、三十数年前、十年後
と、タイムマシンで行き来するようにストーリーの全容が明かされます。
つなげてみたら、偶然がもたらした奇蹟の物語なのでした。

「ポテチ」
個人的には、四作のなかで一番好きです。
重力ピエロに通じる母親の愛を感じさせる作品でした。
遺伝がもたらす運命にほろっときますね。

運命をつかさどるものは遺伝、境遇、偶然
チルドレンのなかで引用する芥川竜之介の言葉が思い出されます。

先に、ラッシュライフオーデュボンの祈り重力ピエロ
の三作品を読んでおいた方が楽しめるでしょう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

魔王

「考えろ!考えろ!」
「覚悟はできているのか!」
独裁者の登場によって憲法が改正されようとしているとき、
登場人物たちが、私たちに問いかけてきます。

目に見えない魔王に立ち向かうのか、それとも、いまこの平和に何も考えず呼吸するのみか。

連続したストーリーを、「魔王」と「呼吸」の2部に分け、
別々の主人公に語らせるという構成は見事。
それぞれのタイトルの付けかたにも、伊坂さんのセンスのよさを感じます。

ところで、千葉ってどこかで聞いたような。
なるほど!あの作品にでていた調査員ですね。ということは・・・
伊坂ワールドには、こういう楽しみもあります。

魔王

| | コメント (0) | トラックバック (0)

重力ピエロ

オーデュボンの祈りにでてくる「桜」、アヒルと鴨のコインロッカーの「河崎」、ラッシュライフの「高橋」、そして重力ピエロの「春」。それぞれ謎めいていて、無機質で、美形男子で、なんとなく似ています。
各作品が、自分の力ではコントロールできない「何か」をテーマにしているように、重力ピエロではDNA(遺伝子)を取りあげています。
死期が迫りながらも、自分のこと以上に「春」のことを気にかける父親に、親子の血のつながりはありません。
遺伝子は自分では選ぶことはできないけれど、それは決して人生の与件ではないのだ!というエールが込められているようで、作品全体が暖かい眼差しに守られているかのようです。
レイプという重いテーマを扱っていますが、最後まで読んで救われたような気がしました。

重力ピエロ重力ピエロ
伊坂 幸太郎

新潮社 2003-04
売り上げランキング : 5,412
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

| | コメント (0) | トラックバック (0)

グラスホッパー

伊坂幸太郎らしいテンポのよさと、クールな書き口はいつもどおり。しかし、出てくるのは非合法な商売で儲ける企業や、人間を虫のように殺す非情な殺し屋たちです。

大都会に生息するヒトという生き物のことを伊坂幸太郎は次のように観察しています。
「人間ほど個体と個体が接近して生活する動物は珍しい。それは哺乳類じゃなくて、むしろ虫に近いかもしれない。」と。
トノサマバッタは密集した場所で育つと、やがて「群集相」という凶暴なタイプに変異するのだそうです。あちこち食い散らかし、共食いさえおこなう変異したトノサマバッタをモチーフにして殺し屋を描くという視点は、さすがとしかいいようがありません。大都会の雑踏のなかに、変異したトノサマバッタが潜んでいるようでゾッとさせられました。この本を読めば、地下鉄のホームに立つとき、背後に「押し屋」がいないか振り返ることになるでしょう。

個人的には優しさが感じられる他の伊坂作品のほうが好きです。「蝉」にも「鯨」にもあまり感情移入できなかったというのが率直な感想なのでした。

グラスホッパーグラスホッパー
伊坂 幸太郎

角川書店 2004-07-31
売り上げランキング : 13,725
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ロマンはどこだ?

それにしても伊坂幸太郎の小説には、泥棒や強盗がよく登場します。
アヒルと鴨のコインロッカー・・・広辞苑を盗むために本屋を襲撃する河崎
オーデュボンの祈り・・・コンビニ強盗に失敗して逃走する伊藤
ラッシュライフ・・・ピッキング泥棒の黒澤
チルドレン・・・銀行強盗の人質になった鴨居と陣内

「陽気なギャングが地球を回す」は、他の伊坂作品に比べて、犯罪描写にありがちな重さや暗さがなく、劇画的なスリルと洒脱な雰囲気が楽しめます。だからタイトルがギャングなのでしょう。ハプニングあり、裏切りあり、騙しあり、、、と、予期せぬ展開にハマリます。

陽気なギャングが地球を回す陽気なギャングが地球を回す
伊坂 幸太郎

祥伝社 2003-02
売り上げランキング : 1,051
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

さらに、このテンポのよさが映画化されるというから楽しみです。
5月13日には全国ロードショーとのこと。
地球を回す4人のギャングですが、
「ロマンはどこだ?」が口癖の響野は佐藤浩市、
正確な体内時計をもつ女、雪子を演じるのは鈴木京香、
銀行強盗の緻密なプランナーで人間嘘発見器といわれる成瀬には大沢たかお、
スリの天才、動物を愛する青年、久遠を演じるのは松田翔太(故・松田優作の次男)、
これは面白そうです。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

ラッシュライフ

またまた伊坂幸太郎にやられました。
互いに何の関係もなさそうな5つの物語が、最後には見事に収斂していきます。
前作「オーデュボンの祈り」の主人公が、さりげなく登場したりするのも楽しめました。
「人生についてはだれもがアマチュアなんだ」といった黒澤の言葉が印象的でした。
仙台の街を舞台にした物語でもあり、懐かしく思います。

ラッシュライフラッシュライフ
伊坂 幸太郎

新潮社 2005-04
売り上げランキング : 4,534
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

| | コメント (0) | トラックバック (1)

オーデュボンの祈り

伊坂幸太郎のデビュー作。
150年も外界との交流が遮断されているという孤島が舞台。
支倉常長の時代から鎖国状態にあるのです。

自らの意志とは関係なくこの島に連れてこられた主人公にとって、
喋るカカシがいたり、島民公認の殺人者がいたり、
そこは常識を逸脱した狂気の世界です。
かと思えば、弱者を助ける者がいて、愛する人のために尽くす者がいて、
読者もカオスな状態が続きます。

この島には
「外から来た人間が、この島に欠けている何かを置いていく」
という、昔からの言い伝えがあるらしいのですが、それは何なのか?
とても気になって読み進んでしまいます。

そして、まるで暗号のような登場人物たちの奇妙な行動、不可解だった一個一個の出来事、
それらが、最後にはジグソーパズルが完成するように見事につながるのです。
そういうことだったのね・・・
と、伊坂さんの本には、いつもそんな魅力がつまっています。

「世の中のすべてのものには役割や存在意義があり、それが少しでも変われば未来は変わるのだ。」
未来を見通す力をもったカカシがこんなことを言ってましたが、
この小説に仕掛けられている緻密な伏線そのものみたいですね。
なんとシュールな小説か。

オーデュボンの祈りオーデュボンの祈り
伊坂 幸太郎

新潮社 2003-11
売り上げランキング : 3,440
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

| | コメント (1) | トラックバック (2)

アヒルと鴨のコインロッカー

現在→2年前→現在→2年前→・・・
と交互に進んでいく構成がまず面白いと思いました。
これに合わせて、主人公も僕→わたし→僕→わたし→・・・と切り替わります。
序盤は淡々と進行していきます。そのためか、少々冗長かなという印象を受けました。登場人物の心理描写で、知的センスあふれるメタファが多用されているあたりは、(この表現力こそ伊坂さんを天才といわしめる感性なのかもしれませんが)技に凝りすぎていて鼻に付く感じもありました。
しかし、、、
断片的な出来事が、ストーリーが進むにしたがって徐々につながり、全体像がみえてきます。後半からは一気に引き込まれてしまいました。
やるせなさの残る悲しい物語のはずが、優しさや爽やかさにあふれる読後感に仕立て上げてしまう伊坂幸太郎さんは本当にすごい。読んだあとの余韻が死神の精度と何となく似ていて、好きな作品の一つに挙げたいと思います。(自分自身がそうでしたが)学生のときに一人暮らしをした経験がある人なら、より共感できるのではないでしょうか。

アヒルと鴨のコインロッカーアヒルと鴨のコインロッカー
伊坂 幸太郎

東京創元社 2003-11-20
売り上げランキング : 3,071
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

| | コメント (0) | トラックバック (0)

死神の精度

本屋大賞の常連さん、伊坂幸太郎さんの作品です。2006年投票では2作品がノミネートされていますが、「死神の精度」は評判どおり"かなり"面白かったです。

この物語の主人公は死神(しにがみ)です。死を間近にひかえた人に接近し、調査をすることが彼らの仕事なのです。その人間が死ぬべきか否かは担当の死神による「可」か「見送り」かの判定にかかっています。死神なので生への執着はありません。感覚もちょっとズレています。そこにあるのは、人間が死ぬ確率は100%であるという割り切りだけです。判定の「精度」は、まさに神のみぞ知るといった感じです。
かたや、どんな悪人であってもホモ・サピエンスたる人間が死に際に思うこととは。。。

収められている6つの短編は、いずれも「そういうことだったのね」という意外なエンディングが楽しめるとともに、切なくも爽やかな読後感でした。とにかく最初から読んでいくことをオススメします。そうすると最後には大きな感動が味わえるでしょう。

死神の精度死神の精度
伊坂 幸太郎

文藝春秋 2005-06-28
売り上げランキング : 981
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

| | コメント (0) | トラックバック (0)